花の詩女 ゴティックメード

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=GOTHICMADE=

公開以来約3年ぶり、ドリパスの9.1ch特別上映にて鑑賞。

日本が誇るメカデザイナーが自らの手で作品世界をアニメーションとして創り上げた、その結晶。

物語は監督インタビュー等にある通り、シンプルなボーイ・ミーツ・ガール。また語り口はおとぎ話のようにもなっています。
シンプルな王道でも丁寧に描かれたそれはお話の持つ力強さを実感させてくれます。
そして本作はロボットアニメなので当然ロボットが登場します。ただしベイマックスドラえもんのような存在ではなく戦車・戦闘機以上、核兵器級の殺戮兵器として。

監督は漫画「ファイブスター物語」を連載しており、その中でも兵器としてのロボット表現を行ってきていますが、監督の頭の中で思い描いているものを読者が把握するのは中々難しいところがありました。それが本作にてお話を描く丁寧さで戦闘シーンがアニメーション化された結果、ようやくその本来の姿を理解することができました。
ロボット以外の戦闘描写、砲撃一つとっても本気で人を殺しにかかってるというか。超絶に発達した技術で作られた兵器のシャレにならなさが嫌でも分かるという。
(たぶん現実の戦争でも狙った標的に当てるというのは難度が高く行う場面も限定的でしょうし、映画等でも狙って当てるより一定範囲に弾をばら撒く表現が多いと思うのですが、この作品では距離があろうが対象が複数だろうが捕捉し絶対当たるという演出がされてます)
子供の頃になまじロボットアニメを見てきた分かなり衝撃的でした。
ただ、この破壊と殺戮のためだけに生み出されたはずの兵器が何とも美しい。起動シーケンス、各部独立して動く所作、この世のものではないような音を発しながら立ち上がる姿。

4Kの解像度対応ということで作画に通常よりサイズの大きな紙が使用されていたり、絵柄はセルアニメーションのものを踏襲しつつも雨粒一つ一つが全て手書きであるなど映像面での手間もかなりかかっています。
音響効果へのこだわりも尋常ではないのですが、IHIアメリカまで行って作られた起動音や飛行音(ジェットエンジンの音を元にしてるらしい)は本当に一度体験してもらいたいです。9.1chの恩恵か物語シーンの生活音から始まって戦闘シーンの重たい着弾音もその世界の本当はこうなっているというのを描き出すのに大きな役割を持ってるのを実感できました。

奇を衒ったことはされていませんしシンプルなお話ですが、非常に魅力があるという不思議な作品です。

データ容量の関係で入りきらないためBD発売はないという話を見ましたが(真偽は不明)、4K、9.1chという作品の性質上、劇場で体験するのが一番良いのではと思いますので、機会のある方は是非一度劇場へ。